2025年4月からに施行される「4号特例の縮小」に関してご存知ですか?
今回のブログでは改正の背景や変更点、今後の対応について詳しく解説します。これから住宅の新築やリフォームを検討している方にとって、関係のある内容となりますので、本ブログを読んで詳細を知ってください。
目次
1.「4号特例」とは何か

「4号特例」は1984年に導入された建築基準法に基づく特例制度です。具体的には、小規模な木造住宅(2階建て以下かつ延床面積500㎡以下)において、確認申請時に構造計算書などの提出を省略できるというものです。
通常、建築物を建てる際には建築基準法に基づき、構造的な安全性を確認するための「壁量計算」「柱の接合方法」「壁の配置バランス」などの確認が必要ですが、「4号特例」の対象となる建築物に関しては、これらを確認申請で提出しなくても良いとされていました。
この特例は「小規模な住宅であれば建築士の裁量に任せても安全性に問題はない」という前提のもとで運用されてきました。
2. 4号特例が問題視された理由

4号特例が問題視されるきっかけとなったのが、2005年の耐震偽装問題(姉歯事件)です。この事件をきっかけに、「確認申請時に構造計算書の提出が不要」という特例が誤解され、本来必要な構造計算自体が行われていないケースが多数発覚しました。
建築士が構造計算を行っている前提で設計・建築が行われていたにもかかわらず、計算自体がされておらず、結果として耐震性能が不足した建築物が建てられていたのです。
さらに、2016年の熊本地震では、耐震等級3の建物16棟が震度7の地震を2度受けても倒壊せずに住み続けることが可能だったという調査結果が示されました。このことから、耐震性能の強化が求められるようになり、4号特例の見直しが必要だという機運が高まりました。
3. 今回の法改正で変わること

法改正後は以下のような変更が行われます
1. 確認申請時の構造計算書提出義務化
これまで4号特例により省略されていた「壁量計算」「柱の接合方法」「壁の配置バランス」などの計算書が、確認申請時に提出義務となります。
平屋かつ延床面積200㎡以下の建物については引き続き特例が適用されるため、提出義務はありませんがそれ以外の建物については、すべて提出義務が生じます。
2. 壁量計算の基準強化
壁量計算の基準が見直され、地震力や風圧力に対してより安全性の確保が必要になります。
これまで「軽い屋根・重い屋根」の2区分だったものが、屋根の種類3パターン・外壁の種類5パターンに細分化されます。これにより、建物の重さや形状により適切な壁量を計算することが求められます。
3. 柱の小径基準の強化
建物の重さが増加すると、それを支える柱にかかる負荷も増えます。そこで、柱の小径(太さ)に関する基準も強化されます。
これにより、柱のサイズや配置が重要となり、これまで以上に精密な設計が必要になります。
4. リフォームへの影響
また、今回の改正ではリフォーム工事の際にも影響が出ます。影響の一例をまとめました。
※京町家のような独特な住宅事情がある地域では、特別な措置が取られている場合もあります
| ケース | 影響内容 | 具体的な対応 |
|---|---|---|
| 間取り変更(壁撤去) | 構造への影響がある場合、確認申請で構造計算が必要 | 壁撤去後の耐震性確保のため、補強案を提示 |
| 耐震補強工事 | 4号特例に基づく簡略審査が不可になるため、構造計算が必須 | 耐震診断の結果に基づき、補強計画を作成 |
| 増築(床面積増加) | 構造への影響があるため、構造計算と補強工事が必要 | 確認申請に耐震補強案を含める |
| 屋根の葺き替え | 屋根重量の増加により、構造計算が必要になる可能性 | 必要に応じて梁や柱を補強 |
| 床材や壁材の変更 | 基本的には確認申請不要。ただし、構造に影響がある場合は構造計算が必要 | 変更内容を事前に確認し、必要に応じて構造補強案を作成 |
つまり、現行の法律に適合していない建物などの構造に関係する工事を行う場合は、工事後に適法にしなければならないので、ちょっとした工事であってもお施主様側の負担が多くなる可能性が出てきます。仮に窓の交換を行うとして、ガラス1枚のアルミサッシから樹脂製のペアガラスに変更した場合、重量が増えるのでその負荷に耐えられる窓枠まわりの構造計算や変更が必要となります。
4. なぜ、法改正が必要だったのか

近年、住宅性能の向上により建物が重くなってきていますが、具体的に以下のような要因があります
・断熱材の強化や高性能化
・太陽光パネルの設置
・窓や外壁材の高性能化
これにより建物の重量が増加し、結果として地震時に建物が受ける負荷が増大しています。耐震性能を維持・強化するために、建築基準そのものを見直す必要が生じています。
また、地震大国である日本において、震度7クラスの地震が今後も発生する可能性があるため、住宅の耐震性能向上は喫緊の課題となっています。
5. まとめ
「4号特例の縮小」は、住宅の安全性を高めるために必要な措置です。これにより、耐震性能の強化や建築基準の適正化が図られます。
しかし、これから住宅を建てる方・直す方にとっては、設計や確認申請に関する負担が増える可能性があります。
タカハシでは以前より許容応力度計算に基づいて住宅を建てているので、今回の改正に関して問題はありませんが、今までこれらを行なってこなかった工務店やハウスビルダーに関しては、申請方法やその他でつまずくことが予想されます。それに伴い役所での処理速度が鈍化して、今までスムーズに申請等を取得できていた弊社でも申請を待たされるといった影響が出てくる可能性があります。
円滑に工事を進行させるためには、早めのご相談をいただくことが一番ですのでいつでもお気軽にお問い合わせください。

【企業理念】
見まもるくらしの提案と想像
釘一本の修繕から、新築・改装などの大きな工事まで、工務店だからこそ出来る
『顔の見える』お仕事を目指し、日々研鑽を積んでおります。
